Kraft Architects  Atsushi Nakamura

波志江の家

本計画は、群馬県伊勢崎市の郊外、都市開発の過程で取り残された未接道の敷地に建つ平屋住宅である。都市・農地・自然という異なるスケールが重なり合うこの場所を否定的条件として克服するのではなく、同時代的な可能性として引き受けることから計画は始まった。住宅は東西に細長い敷地に沿って配置され、南北方向に広がる風景を生活の中に取り込む。均質に反復する開口部は風景を一望の景観としてではなく、遠景・中景・近景の断片として内部空間へと引き込み、住まいと周囲の関係を更新し続ける。内部は東西に連なる連続体として構成され、明確な部屋の区分を持たず、動線や光、日常の振る舞いによって空間の意味が生まれていく。二つの軸が交差する位置には複数の柱が置かれ、家族の関係性を仮留めする構造として働く。施主である大工との協働のもと最小限の図面で進められた建設プロセスは、設計と施工の境界を曖昧にし、新たな合理性を導いた。こうして生まれた空間は固定された完成形ではなく、時間とともに更新され続ける「未完の家」として開かれている。

所在地:群馬県伊勢崎市  
延面積:134㎡   
主要用途:一戸建ての住宅  
構造/規模:木造/平屋  
竣工:2025  
写真家 : Takuya Seki  
構造設計:朝光構造設計  

受賞:JIA 日本建築家協会 関東甲信越支部 第8回 住宅部会賞2025 10宅選